市指定文化財[天然記念物]

[更新日:2015年04月01日]

月訪の桜

市・天然記念物
昭和三六年一二月二六日指定
黒部市宇奈月町浦山一九五〇(鶏野神社)

 この月訪の桜は、浦山の鶏野神社境内にあり、宝亀六年(七七五)越中の国司、大伴家持(七一六〜七八五)がこの地を巡視した折に、記念として植えたものと伝えられている。かつては樹高約二〇b、幹まわりが七〜八bあったという。現在は朽ち果てた古株から萌芽が延び、代を継いでいる。桜の種類はエドヒガンである。

 地元には大伴家持が浦山まで足を伸ばし、次の歌を詠んだという伝承がある。
「 鶏の音もきこえぬさとに終夜
           月よりほかに訪う人もなし 」

 万葉集には載っていないが、もしも実際に来ていたら、来てもいないのにどうしてこのような言い伝えがあるのだろうか、あるいは義経伝説の類の話では、などといろいろ想像してみることは、夢があって面白い。宇奈月町に伝わるロマンの一つであろう。とにかく、月訪の桜と呼ばれるエドヒガンの古樹があり、その古株の萌芽が代を継いでいることは事実である。

●富山地方鉄道「浦山駅」下車、徒歩一〇分

 

桜井の化藤

市・天然記念物
昭和四〇年二月一日指定
黒部市三日市一〇三五の一(八心大市比古神社)

  この化藤は八心大市比古神社境内のJR黒部駅に通ずる県道をはさんだ飛地にある。以前は富山県の天然記念物に指定されていた巨樹であったが、樹幹が腐蝕し縮小した為に、県指定が解除となった。その後市指定天然記念物になっている。

 この化藤の根もとは幹まわり約八〇aのものが二本、幹まわり約五〇aのものが五本、力強く天に向かってからみあいながら伸び約二五bの高さからいくつにも分かれて下に垂れている。県指定当時は、飛地の中央にある大ケヤキの樹冠にかぶさり、春の開花期には紫色の花房が一面に垂れ下がり、三日市の目抜き通りを飾る見事な風物であった。 

 昔からこの大フジを三島の化藤とよび、フジの精が美女に化けて毎晩郷民を驚かすので、樹下に小祠を建ててフジの精を祭り、フジの地神と崇めたところ、この怪異がなくなったと伝えられている。

 フジは日本の特産で、昔からマツを男性、フジを女性のシンボルとして、フジに関する伝説は日本各地に残っている。

●富山地方鉄道「電鉄黒部駅」下車、徒歩五分

 

謙信手植の松

市・天然記念物 
昭和四五年四月一日指定
黒部市生地経新四二五九(YKK株式会社)

  この地区にはたくさんのクロマツが生育しているが、本樹ほど大きいものはなく、きわだっている。樹齢は四〇〇年以上と推定される。幹まわりは地表で約六b、樹高は約一九bあり、枝張りは東西約二七b、南北約二四bある。

 この謙信手植の松は民間で行われた庚申信仰、七庚申(一二年、閏年は一三年の中間、六年めまたは七年めに行われる行事)の際、庚申塚に植えられたものである。

 庚申塚は土饅頭型に作られ、卒塔婆をたて、その脇にマツやスギやキリなどを植える風習であった。これを庚申の松と言った。のちに上杉謙信(一五三〇〜一五七八)が越中に攻め入り、当地で病気にかかり、新治の神のお告げで霊水につかり平癒した記念に植えた(伝説)という、歴史上の人物と付会させて謙信手植の松とも言い伝えてきた。

 この手植の松の樹勢はすばらしく貴重な存在だということで、平成元年度に読売新聞社が行った、新・とやま名木十選に選ばれた。市内では有数の巨樹名木である。

●あいの風とやま鉄道「生地駅」下車、徒歩二〇分

 

 

天池の宮ツバキ社叢

市・天然記念物 
昭和五六年六月三〇日指定
黒部市天池八九の一(神明社)

 

 天池の神明社は、天池の宮とも呼ばれ、春になると約四〇〇平方bの境内に赤、桃、白の花をもったツバキが一面に咲く。この中には幹まわり約九〇a、樹高約七bに近いものもあり、ツバキ社叢の古さを物語っている。

 ここのツバキのおおかたは園芸品種で、白色中型の花には白妙蓮寺、大白玉、蝶千鳥、桃色大型の花には曙、桃色中型の花には加賀八朔、神宮太郎庵、紅色中型の花には薄氷、黒佗助、その他五色椿、野生種のユキバタツバキがみられ、中には江戸時代に流行した園芸品種もある。

 昔、神社にツバキを豊作の精霊花として植えた風習が、全国に残っている。このツバキ社叢も、当時の名残をとどめているものであろう。

 天池地域は、江戸時代に越後から移住した人びとによって開拓され、その際に諏訪大明神を勧請して、ここに宮をたてたと伝えられている。また、境内は前沢台地の末端にあって、ウラジロガシやツバキなどの生える照葉樹林の一部が残っていることも学術上貴重である。

●富山地方鉄道「東三日市駅」下車、徒歩二〇分

 

三島の大ケヤキ

市・天然記念物 
昭和五八年九月二八日指定
黒部市三日市一〇三五の一(八心大市比古神社)

 この三島の大ケヤキは、八心大市比古神社の飛地である地神塚境内の中央にあって、市指定天然記念物の桜井の化藤が一面にまといついている。

 このケヤキの樹形は幹まわり約五・六五b、地上約六bの箇所で太い幹は二本に分かれ、樹高約二五bあり、約四〇平方bの広さに枝を張っている光景は、まことに壮観である。樹齢は三〇〇年以上を数える。

 ケヤキは、コナラやクヌギ、イヌシデなどの樹木と混り合って大きい林をつくるが、荻生の日吉神社のイヌシデ林、また町名の椚町などは、この地域一帯の平野部が、これらの樹木からできた暖温帯性の落葉樹林であったことを物語っている。

 なお、このケヤキの巨樹が地神塚の背後にあって、神が宿っている神木として尊敬されていることは、祖先がもっていた巨木信仰の一端を示すもので、しかも化藤と一体となってその神秘性を深めていることも大きい特徴といえる。

●富山地方鉄道「電鉄黒部駅」下車、徒歩五分

 

仙人岩屋のヒカリゴケ

市・天然記念物 
昭和六〇年五月一日指定
黒部市宇奈月町黒部奥山国有林四〇イ林小班

 仙人岩屋に一歩足を踏み込むと、足下の土の表面が萌黄色に美しく光っているのに驚く。これがヒカリゴケである。外から射し込む光が非常に少ないので他のコケ類は生育できない。

 ヒカリゴケは、本州中部以北から北海道の冷涼なところに分布する。コケ類のうち蘚類に属し、ヒカリゴケ科ヒカリゴケ属の一科一属一種の希少な種である。

 ヒカリゴケが光るのは本体(茎葉体という)ではなく、また、蛍のように自分自身が発光しているものでもない。胞子が発芽して伸びた原糸体の細胞が球形でレンズの働きをするので、入射光線が屈折して細胞内に入り、細胞内の葉緑体で反射され、再び屈折されて外に出て来るので、葉緑素の色を感じる萌黄色に光って見えるのである。

 なお、指定されてはいないが、阿曽原温泉から阿曽原峠までの途中の岩屋にも群生している。また、称名峡八郎坂の途中や新潟県焼山登山道脇の小岩窟からも見つかっている。

●黒部峡谷鉄道経由、関西電力上部軌道「阿曽原駅」下車、徒歩三時間

 

白山社のウラジロガシ林

市・天然記念物 
昭和六三年四月三〇日指定
黒部市福平一六〇二(白山社)

  このウラジロガシ林は、布施川上流の標高二四〇bの台地にある白山社境内に、約三〇〇平方bの広さにわたって分布している。全体で一〇本余りが白山社を囲むように生育し、幹まわりが八〇a前後のものが多い。林床はユキバタツバキ、エゾユズリハ、シダの仲間が多く見られる。

 ウラジロガシはツバキと同じように冬でも葉が青々としている照葉樹の一つで、他にスダジイやアカガシなどがある。本州中部以西の温暖な地域に分布し、富山県はその北限に近い。

 白山社のウラジロガシ林は、次の特徴があり貴重な存在となっている。
一、山地部に繁茂しているウラジロガシの分布状態を示す貴重な残存林である。
二、日本人は古来より常緑樹林を神の宿る聖地として保存してきたが、この林内に社殿、庚申塚があることは、日本古来の信仰的由緒を強く物語っている。

●富山地方鉄道「電鉄黒部駅」下車、池尻行バスで「池尻」下車、徒歩三〇分
 または、国道八号田家交差点から車で三〇分

 

旧三日市小学校の百年桜

市・天然記念物 
平成一八年八月二九日指定
黒部市三日市一二八八(黒部市)

  この桜(ソメイヨシノ)は、三日市尋常高等小学校の新任教師であった森丘正民(一八八五〜一九五五)が、初任給で何か記念になるものをと考え、桜井の荘と伝えられるこの地にちなんで数本の桜の苗を購入、旧黒部庁舎の位置にあった校舎の敷地に、明治四〇年(一九〇七)に植樹した。

 校舎は、その後、大正一二年に旧三日市小学校の地に移転したが、この時に桜の木も移植された。昭和三二年の校舎焼失の後も、児童を見守ってきたが、今は一本を残すのみとなった。

 幹まわり約二・六五b、樹高約一〇b、枝張りは南北約一六b、東西約一一bである。

 現在、全国的に最も多く植えられている桜の品種はソメイヨシノだが、一般に寿命が短いとされている。植えた年代がはっきりし、樹齢百年を超えるような古い木で、なおかつ樹勢も旺盛で毎年たくさんの花を咲かせるソメイヨシノは、全国的にも大変珍しいものと思われる。

●富山地方鉄道「電鉄黒部駅」下車、徒歩一〇分